2026/09/13 14:58

「みかんって冬の食べ物じゃないの?」

秋口、まだ暑さの残る9月、スーパーの店頭に緑色のみかんが並び始めると、

そう思う方も多いのではないでしょうか。

実はこれ、「極早生(ごくわせ)みかん」と呼ばれる、みかんシーズンの一番手なんです。

私たちは、瀬戸内海のしまなみエリアでみかんを全国へ届ける「わらしべ。」です。

この記事では、極早生みかんがどうやって生まれたのか、その由来と歴史を、みかん屋の視点でご紹介します。

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極早生みかんとは?まず基本のおさらい

みかん(温州みかん)は、成熟する時期によって

「極早生」「早生(わせ)」「中生(なかて)」「晩生(おくて)」の4つに分類されます。

 その中で最も早く、9月から10月頃に収穫されるのが極早生みかんです。

ここで大事なポイントがあります。極早生みかんは「普通のみかんを早採りしたもの」ではありません。

品種そのものが、もともと早く熟すという特性を持っているんです。

皮が緑がかっているのも、未熟だからではなく、
この時期ならではの旬の姿。だから青いままでも美味しく食べられます


そもそも温州みかんはどこから来たのか

極早生みかんの由来を語る前に、まず「温州みかん」自体のルーツから見ていきましょう。

「温州みかん」という名前は、

中国・浙江省の温州(柑橘の名産地として知られていた土地)にちなんだものですが、

実際に中国から伝来したわけではありません。

近年のDNA鑑定や遺伝研究により、温州みかんは日本国内で生まれた品種であることが明らかになっています。

紀州みかん(小みかん)にクネンボの花粉が交雑してできたもので

鹿児島県長島が発祥の地と考えられており、

少なくとも1633年には人の手によって植え付けられていた記録が残っています。

つまり温州みかんは、約400年近い歴史を持つ、れっきとした日本生まれの柑橘なんです。


極早生みかんはどう生まれたのか|「枝変わり」という奇跡

ここからが本題です。極早生みかんのルーツは、「枝変わり(突然変異)」にあります。

枝変わりとは、同じ木の中の一部の枝だけに、通常とは違う性質の実がなる現象のこと。

長年みかんを育てる中で、農家は「あれ、この枝だけ、いつもより早く色づいているな」という

偶然の発見を重ねてきました。

代表的な品種の由来を見てみると、この「偶然の発見」の積み重ねがよく分かります。

  • 日南1号:1979年、宮崎県日南市の農家が自園の「興津早生」の木の中に、

    着色が早く酸抜けの良い実をつけている枝を発見。

    これを増殖させたのが始まりです。1989年に品種登録されました。

  • ゆら早生:1985年、和歌山県由良町の農家が自園の「宮川早生」の中から発見した枝変わりを、

    接ぎ木で増やして育成。1995年に品種登録されています。 

つまり極早生みかんは、研究室で計画的に開発された品種ではなく、

現場の農家が畑の中で偶然の変化に気づき、それを大切に育て上げてきた結果、生まれてきた品種群なんです。 

なぜ「少しでも早く」を農家は求めてきたのか

この歴史の背景には、農家たちの一貫した願いがあります。

「少しでも早く市場に出せるみかんを作りたい」という思いです。 

昭和の時代、宮崎・和歌山・愛媛など各地の産地で、

このような枝変わりが次々と発見され、現在の代表的な極早生品種が確立していきました。

今では30種類以上もの極早生品種が存在し、これは温州みかんの中でも最も品種数の多い系統群になっています。
 

極早生みかんが育つのは、どんな場所か

極早生みかんの栽培には、日当たりの良い南向きの斜面や、海風が吹く温暖な地域が適しているとされています。

昼夜の寒暖差があると果実に締まりが出て、酸味と甘みのバランスが良くなるといわれています。

まさに、瀬戸内海に浮かぶ島々のような、海に囲まれ、温暖な気候と適度な寒暖差を持つ土地は、

この条件にぴったり合っています。

実際、極早生みかんの生産量は熊本県・和歌山県・愛媛県が上位を占めており、いずれも温暖な沿岸地域です。 

農家にとって収穫のタイミングは非常に繊細で、早すぎれば酸が強すぎ

収穫が遅れれば果皮が傷みやすくなるという難しさがあります。

だからこそ、長年の経験を積んだ農家が、ベストな収穫時期を見極めているんです。

「初物七十五日」に込められた特別な意味

極早生みかんが日本で愛されてきた背景には、実は文化的な理由もあります。

日本には「初物七十五日」ということわざがあり、初物を食べると寿命が75日延びると言われてきました。

 その年最初に出回るみかんである極早生みかんは、まさにこの「初物」。

秋の実りの始まりを告げる、縁起の良い果物としても親しまれてきたんです。

今もなお続く「枝変わり探し」の歴史

面白いのは、この「枝変わりを見つけて育てる」という歴史が、今も続いているということです。


例えば三重県御浜町では、極早生の温州みかんなどを交配させた「味一号」という品種が栽培され、

糖度などの基準をクリアしたものは「みえの一番星」というブランド名で出荷されています。

また大分県では「おおいた早生」という極早生品種の初競りが毎年行われ、地域の秋の風物詩となっています。

昭和の時代に始まった「少しでも早く、少しでも美味しく」という農家の探求は

令和の今も、各地の産地で形を変えながら続いているんです。

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まとめ

極早生みかんは、単なる「早採りのみかん」ではなく、農家が長い年月をかけて偶然の枝変わりを見つけ、

大切に育て上げてきた品種群でした。緑色の皮は未熟のサインではなく、

むしろ400年近い温州みかんの歴史の中で積み重ねられてきた、進化の証なんです。

私たちが暮らすしまなみエリアも、極早生みかんが育つのに適した気候の土地。

今年もその歴史の続きを、畑で見守りながら大切にお届けしています。